人生で大切なことはすべてアスリートから学んだ

優れた成績(結果)を残す選手には、必ず理由(原因)がある。アスリートがプレーで表現してくれたことを、わかりやすい文章に落とし込んで発信します。

【佐伯由香里】世界陸上で人気者になった小柄なランナー、一児の母に

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7月13日(木)に網走で行われた、陸上の『ホクレン中長距離チャレンジ最終戦』。男子1万メートルの大迫傑選手(ナイキ・オレゴンプロジェクト)は27分46秒64で日本人トップの2位に入ったが、8月の世界陸上の参加標準記録(27分45秒00)にはわずか1秒64届かなかった。

気温25℃という悪条件下で27分台、日本人2位の選手を約30秒引き離してのゴール。現時点で、国内では”頭一つ抜きん出た存在”なのに、それでも戦いの舞台に立つことができない。世界の長距離のレベルの高さには、ただただ唖然とするばかり・・・。

そんな猛者たちが集まる五輪や世界陸上では、毎回その実力の差を嫌というほど見せつけられることになるのだが、これまでに記憶に残った「周回遅れ」が一つある。それは、09年『ベルリン世界陸上』の女子1万メートル決勝での、佐伯(さはく)由香里さんの走りだ。

中村友梨香さん(7位)、福士加代子選手(9位)とともに日本代表として出場した佐伯さんは、体調が不十分だったこともあり、完走した20人中20位。先頭から2周遅れでのゴールとなった。しかし、身長142センチ・体重29キロの小さな体で、最後までたった一人で懸命に走る姿に、会場からはスタンディングオベーションと大歓声が送られた。

ゴール後には、待っていた大会のマスコット(かなり大柄)の着ぐるみに抱きかかえられて、そのあまりの体格差に場内からは笑いが。優勝者でもないのにインタビューに呼ばれ、「サンキュー・ベリーマッチ。アイム・ユカリ・サハク・フロム・ジャパン。ベルリン・イズ・ビューティフル・シティー」と笑顔で話し、再び大きな拍手を浴びた。これが、彼女が20歳のときの出来事である。

あれから時が経つこと8年ー。この間に佐伯さんは現役を引退し、「臨床心理士になりたい」と聖徳大学に進学。昨年、結婚して、今年7月3日にママになった。

SMAPのヒット曲『夜空ノムコウ』の中に、「あの頃の未来に僕らは立っているのかなぁ」という歌詞があったけど、”現在”の佐伯さんが立っているところは、きっと”あの頃”に思い描いていた未来ではないだろう。ベルリン世界陸上のころは、将来を嘱望されたランナーだったし、事実、いつか自分が赤ちゃんを産むなんて、頭の片隅にもなかったそうだ。

「人生はほとんど計画通りにいかない」ということは、それほど長生きしなくてもわかる。たとえ目標と違う方向に進んでいったとしても、それは別に失敗ではなくて、”想像もしなかった幸せ”に出会えるということなのだ。生まれたばかりの女の子を抱っこしながら、『ロンドン世界陸上』をテレビで見る。これもまた素敵な人生だと思う。

 

佐伯由香里さんから学んだこと

「計画通りにいかない人生=想像もしなかった幸せに出会える」ということ。