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人生で大切なことはすべてアスリートから学んだ

優れた成績(結果)を残す選手には、必ず理由(原因)がある。アスリートがプレーで表現してくれたことを、わかりやすい文章に落とし込んで発信します。

【川井梨紗子、上野由岐子】「目指す場所」があることの幸せ

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リオ五輪女子レスリング63キロ級金メダリスト、川井梨紗子選手至学館大)。直前に吉田沙保里選手が敗れるという難しいシチュエーションの中、初出場で快挙を成し遂げた。栄和人チームリーダーが豪快に投げ飛ばされる「お約束」のシーンは、何度見ても微笑ましい。(受け身もお見事!)

川井選手は本来は58キロ級の選手なのだが、この階級には伊調馨選手(ALSOK)がいたため、周囲から63キロ級への転向を勧められた。「馨さんにも勝ちたいし、オリンピックにも出たい」。迷っているときに背中を押してくれたのは、元レスリング選手の母・初江さんだった。

初江さんは、89年世界選手権に出場した経歴の持ち主だが、当時はまだ女子レスリングは五輪競技ではなかった。お母さんは目指すことさえできなかった。挑戦できる立場にいるのが羨ましい」と言われ、リオまでの期間限定で階級変更を決意。「伊調から逃げた」という批判を、金メダルという最高の結果でねじ伏せた。 

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そして、リオ五輪が開幕する少し前、野球界にとって嬉しい出来事があった。2020年東京五輪の追加種目として、「野球・ソフトボール」の採用が正式に決定したのだ。

このことを誰よりも喜んでいるのは、北京五輪の決勝トーナメント2日間計3試合で413球を投げ込み、日本を金メダルに導いた上野由岐子選手(ビックカメラだろう。マウンド上で仁王立ちする姿や、アメリカの主砲がたしか「ブストス」という名前だったこと、そして優勝した瞬間の宇津木妙子さんの絶叫は今でもよく覚えている。

ソフトボールはその後、ロンドン・リオと2大会続けて五輪競技から除外された。上野選手はモチベーションを失い、引退を考えたこともあったが、宇津木麗華さんの「ソフトボールに恩返しする気持ちで頑張りなさい」という言葉を心の支えに、プレーを続けてきたそうだ。

目指す場所が「できた」のがレスリングなら、目指す場所が「なくなった」のがソフトボールである。伊調馨選手の4連覇も、吉田沙保里選手の3連覇も、女子レスリングがアテネ大会から五輪競技に採用されたから達成することができた。ソフトボールも除外されなければ、ロンドンで2連覇、リオで3連覇していたかもしれない。十分に実力を兼ね備えているのに、舞台に立つことが許されない。川井選手のお母さんや上野選手の無念さはいかばかりであったか。

目標があるから、人は頑張ることができる。シンクロの”マーメイドジャパン”が「食べる、寝る、トイレ以外は練習」という地獄のような日々を耐えてきたのも、「リオ五輪でメダルを取る」という目標があったからだ。プレッシャーや重圧で吐きそうになったり、本番で思うような結果を残せなかったとしても、一歩引いて物事を考えてみたとき、目指す場所があるということ、その舞台に立てることは本当に幸せなことなのだ。

川井選手は東京五輪は本来の58キロ級で目指すそうだ。「63キロ級で金メダルをとったんだから、そのままの階級でいいのでは?」と思ってしまうけど、やっぱり伊調馨選手と戦って勝ちたいのだろう。上野選手は4年後は38歳。北京のときのようにエースではないかもしれないけど、まだまだメンバーに入る力は十分にある。「五輪を目指せる幸せ」を誰よりも理解している二人の勇姿を、2020年に見られると嬉しい。

 

川井梨紗子選手&上野由岐子選手から学んだこと

目標があるから人は頑張れる。「目指す場所」があるのは本当に幸せなこと。