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人生で大切なことはすべてアスリートから学んだ

優れた成績(結果)を残す選手には、必ず理由(原因)がある。アスリートがプレーで表現してくれたことを、わかりやすい文章に落とし込んで発信します。

【為末大、竹内智香】アウェイに飛び込む勇気

陸上 スノーボード

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世界陸上の男子400mハードルで2度銅メダルを獲得した、”侍ハードラー”こと為末大さん。中学のときに、全国大会の100mと200mで2冠を達成。その後、400mハードルに転向し、日本ジュニア記録を樹立。常に同世代のトップを走り続けてきた。

そんな為末さんは、大学3年生のときにシドニー五輪に出場したのだが、予選で突風にあおられ、9台目のハードルで転倒。その組の最下位でレースを終えるという挫折を味わった。穏やかな風で、走りやすく設計されている日本の競技場に慣れていて、海外の過酷な気象条件に対応できなかったのだ。

欠点を克服するために起こした行動は、単身で世界の賞金レースを転戦すること。当時はまだ大学生で十分な資金もない中、言葉の通じない世界に、たった一人で飛び込んでいったのである。そして、この武者修行の経験が、翌年のエドモントン世界陸上銅メダルという結果に繋がった。「失敗も転倒もある。でも、本当の失敗や敗北の意味は、転倒したという結果ではない。転倒したまま起き上がらないことだ」(著書『インベストメントハードラー』より)

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ソチ五輪スノーボード女子パラレル大回転銀メダリスト、竹内智香選手(広島ガス)。12歳でスノーボードを始め、オリンピックはソルトレイクシティ(22位)、トリノ(9位)、バンクーバー(13位)。そして4度目の出場となったソチで、スノーボード競技日本人女性初のメダリストとなった。

トリノ五輪で「とても表彰台に上がれるレベルではない」という厳しい現実を突きつけられた竹内選手は、国内でのトレーニングに限界を感じ、単身で強豪国の選手が集まるスイスに行くという決断をした。当時の世界ランキングは16位前後で、スイスチームに「私を練習に参加させてほしい」と直談判をしても相手にされない日々が続いたが、独学でドイツ語をマスターするなど粘り強く交渉。2007年から正式にチームへの帯同が認められた。

5年間の武者修行を経て、2012年に帰国。国立スポーツ科学センター(JISS)の最新鋭の設備を使って、筋持久力の強化に取り組んだ。スイスで培った技術に、日本で強くなったフィジカル。最高の状態で迎えたソチ五輪は、1ターン1ターンが本当に楽しかったそうだ。「強くなるには、自分の考えをしっかり言うことができて、周囲の人の助言を聞き、自分で判断をして行動に移すことが大切」(著書『私、勝ちにいきます』より)

ビジネス書を読むと、「若いうちにアウェイを経験しなさい」「他流試合をたくさんやりなさい」というようなことがよく書いてある。これは至極まっとうな意見だと思うのだけど、頭ではわかっていても、なかなか行動に移せないのが人間というものだ。そんなとき、躊躇する自分を駆り立てるものがあるとしたら、それは「変わりたいという強烈な思い」ではないだろうか。

為末さんと竹内選手は、大舞台で「自分の実力が世界では通用しない」ということを痛感し、「弱い自分を変えたい」という一心で起こした行動が、のちに世界大会でのメダルを引き寄せた。自らアウェイに飛び込む勇気を持つことの大切さを、身を持って教えてくれたと思う。