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人生で大切なことはすべてアスリートから学んだ

優れた成績(結果)を残す選手には、必ず理由(原因)がある。アスリートがプレーで表現してくれたことを、わかりやすい文章に落とし込んで発信します。

【増田明美、小西裕之、森昭一郎アナ】泣きたいときは泣けばいい

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1月31日に行われた「大阪国際女子マラソン」で、福士加代子選手(ワコール)日本陸連が定めた派遣設定記録を切る2時間22分17秒で優勝した。テレビの生中継を見ていたのだが、リオ五輪切符を確実にする渾身の走りに、40キロを過ぎてから涙が止まらなくなった。同じ頃、同じような状態になっていたのが、解説者の増田明美さんである。

アナ 「8年前、フラつきながら這うように、この長居の周回道路を歩んでいましたけれども」
増田 「そうでしたね・・・」
アナ 「あの時とは違う、この福士選手の走りということになりますよね」
増田 「よかったですね・・・(鼻をすする音)」
アナ 「ええ。増田さんももう涙を抑えきれない。この福士の走り!これが8年間の福士の成長!」


それまで冷静に実況を続けていた増田さんが急に涙声になり、その後は言葉を継げなくなってしまったのだ。同じ第一中継車に乗っていた高橋尚子さんのフォローで事なきを得たが、増田さんがレース中に号泣したのは、おそらく初めてのことだと思う。

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1988年ソウル五輪体操男子団体銅メダリスト、小西裕之さん。名前を聞いてすぐにはピンとこない方も、”アテネの号泣解説者”と言えばお分かりいただけるのではないだろうか。

アナ「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ!決まった!勝った!勝ちました!」
小西「よくやった・・・」
アナ「28年ぶりの王座奪還!再び世界の頂点に立ちました!体操ニッポン、日はまた昇りました!」
小西「みんな頑張ったんですね・・・(涙声)」
アナ「小西さん、どうぞ泣いてください。小西さんの目から大粒の涙がこぼれてきました」


鉄棒の最終演技者の冨田洋之選手が、「これさえ取れば」のコールマンを取った後ぐらいからしゃべれない状態になり、「みんな頑張ったんですね」の前にも何か言っているのだが、声が震えてよく聞き取れない。そこで、実況を担当していたNHK刈屋富士雄アナウンサーが「小西さんは泣いている」「それでもしゃべろうとしている」ということを視聴者に伝えたくて、このような言い方をしたのだそうだ。あのとき「どうぞ泣いてください」と言われて、小西さんと一緒に泣いた人はきっとたくさんいたと思う。自分もその一人だ。

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フジテレビの森昭一郎アナウンサー。2003年の女子バレーW杯、日本 vs ポーランドの試合後のインタビューを担当していたのだが、日本の勝利に感極まって号泣し、高橋みゆき選手にマイクを奪われた。

アナ「それでは・・・(声がひっくり返って言葉が続かない)」
高橋「(マイクを奪って)それでは~勝ちましたぁ~」


高橋選手がとっさに機転を利かせてくれたおかげで、選手も会場も大爆笑となった。本人は「結果オーライで、決して褒められない」とかなり落ち込んだそうだが、森アナの気持ちは手にとるように分かるし、場が盛り上がったのでこれはこれでよかったと思う。

スポーツは”筋書きのないドラマ”である。アナウンサーや解説者は台本やセリフが何もない中で、試合の展開を見ながらアドリブで言葉を繋がなくてはならない。選手の状態や動きを、専門的な視点でわかりやすく伝えるために解説者は存在しているし、インタビューで選手の生の声を聞き出すためにアナウンサーは大会に派遣されている。それなのに号泣して話せないなんて、本来は「与えられた仕事を全うしていないじゃないか!」ということになるのだが、(個人的には)増田さんや小西さん、森アナを責める気持ちにはこれっぽっちもならないのだ。

目の前で素晴らしい結果が出たとき、泣いてはいけない、何か話さないといけないとわかっていながら、それでも感動のあまり言葉が出ない。そんな解説者やアナウンサーを見て、視聴者がもらい泣きをする。これもまた、スポーツの一つの醍醐味だと思う。